「地域の足を守れるか」〜まちを歩くと地域課題が聞こえてくる〜

町田市に隣接する閑静な戸建住宅の方とお話しをする機会がありました。最寄り駅まで出るにはバスが必要だが、運行本数の減便で都合を合わせるのが難しく、高齢による足腰の衰えもあり外出しづらいとのこと。

神奈川ネット平田いくよ市議提供資料

横浜市は、この地域を含む青葉区北西部を対象エリアとして、路線バス維持のための検討案について、市民に向けた意見募集を行いました。利用人数と運行数が多い路線を連節バス(2台連結したバス)にして、乗務員不足問題解決と経営資源を生み出した上での検討案ということで、A案、B案2つの案が提示されていますが、A案とB案の支持は拮抗しており、市民の意見の一致にはほど遠い状況であることが窺えます。

A案は、青葉台駅直行ではなく日本体育大学での乗り換えが必要となるが、一定の便数を確保するという案。日体大がバリアフリーの待合施設の設置を予定しており、現在 日体大は図書館、食堂、整骨院を一般開放しているとのことでした。
そしてB案は、減便予定だった路線の運行を維持する案です。
さて、先日日体大に施設の一般開放の状況を確認したいと考えて、現地に行ってきました。運行するバスを眺めつつ、守衛室で食堂の位置などを尋ねますと、食堂の一般公開はしていないし、図書館は事前にネット予約をした人限定とのこと、さらに、同じように訪ねて来る方がいて困っていると言います。

事実と異なる情報を掲載して意見募集を行えば、この意見募集の回答の有効性が揺らいでしまう、しかも、この情報はA案に回答を誘導しかねないものです。横浜市の市民意見募集のあり方自体に問題がないのかを、問う必要があります。

地域交通の柱であるバスの減便や廃止により、高齢者の外出機会の減少は健康や生活の質に大きな影響があることはもちろん、地域経済の停滞からさらに行政サービスの縮小につながる恐れがあります。ただし、これは市内北西部のみの問題に止まらず、今後さらにあらゆる地域で多発する課題となることは明らかです。

また、従来型のバス事業者だけでは移動手段の確保が困難になっていることは否めないことから、横浜市がイニシアティブを取ってコミュニティバスやデマンド交通、あるいは地域住民の力を借りた自家用有償旅客運送など、さまざまな可能性を検討する必要があります。同時に、こうした移動手段を仕事として担う人材確保策も必要です。命を運ぶ責任ある職業として、労働条件の改善や基本報酬の確保策を行うべきです。
私は、2010年に、外出(買い物や通院)が困難な高齢の方や障がいのある方の支援する移動サービスW.Coららむーぶ・みどり設立(福祉クラブ生協)に携わりました。しかし、10年以上経っても、こうした市民の実践を後押しする制度はなかなか整備されず、担い手確保にも苦慮しています。
地域交通の課題解決の先行事例や課題を抱える地域同士の情報交換などを通じて、行政や事業者、市民も交えて地域に最適な移動手段を検討をしていくことが大切であり、そうした仕組みづくりに取り組みたいと考えます。