IR誘致撤回の教訓は生かされるのか

2021年9月のIR誘致撤回後、横浜市は二度にわたって、山下ふ頭再開発の新たな事業計画策定に向けた市民や事業者の意見、提案を募ってきました。未だ事業の基本構想や概要、事業規模などは提示されていませんが、意見募集にあたって公開・配布されているリーフレットには、2026年に事業化、2030年頃に共用開始と、すでに今後の進め方が提示されています。

先頃始まった横浜市会第1回市会定例会には、山下ふ頭再開発検討委員会条例案も提案されています。4月からは、具体的な検討を開始して1年半を目途に答申をまとめるんだそうです。しかし、そう首尾良く進むのでしょうか。
神奈川ネットの平田いくよ市議は、「今後の進め方」は、検討委員会での検討を踏まえて提示されるべきであり、現在示されている「今後の進め方」については、一旦白紙とすべきと指摘。これに対して市長は「目標はおいているが、進捗に合わせて適宜設定していく」と、あくまでも既定路線で進める姿勢は崩しませんでした。

事業者提案に含まれていた「スポーツベッティング誘致」についての質問もありました。スポーツベッティングとは、スポーツを賭け(ギャンブル)の対象とするビジネスです。(事業者提案募集資料63ページから)

スポーツベッティングをめぐる「IRカジノの誘致撤回したのだから、ギャンブルを含む機能・施設は禁止とすべきではないか」という議員の質問に対して、市長は「市民の皆さまのご理解が得られない機能や施設につきましては新たな事業計画に導入いたしません」と答弁しましたが、市民の理解云々以前に明確に違法な提案なのだから資料に掲載すべきではないと、私は思います。

横浜市の臨海部をめぐる計画としては、「山下ふ頭開発基本計画」(20159月に策定)に加え、山下ふ頭も含む「横浜市都市心臨海部再生マスタープラン」(20152月に策定)があるのですが、このマスタープランの中には、カジノ・IR事業がイメージされていました。(16ページ、34ページ)

IR誘致撤回を受けて、山下ふ頭の開発計画は大転換したはずです。もちろん、世界の経済社会動向も大きく変化しています。まずは、「山下ふ頭開発基本計画」の上位計画に位置付けられる「横浜市都市心臨海部再生マスタープラン」を再検討することから始めるべきではないでしょうか。