多文化共生社会〜「共に生きる」社会をつくる
この国には、在日と呼ばれる人たちが44万人います(2022年6月現在)。でも、在日という呼称の中には、在日朝鮮人、在日韓国朝鮮人、在日韓国人などがあり、在日同胞社会の歴史的情況や立場、個人のアイデンティティで異なります。
先日会った二十歳の在日の若者は、「本当は在日朝鮮人だと言いたいが、めんどくさいから韓国だと言っておく」と話します。めんどくさいという言葉の裏にあるのは、日本人の多くが朝鮮という言葉に北朝鮮を感じとり差別されてしまうのではないかという恐れではないかと思うと胸が痛みました。
さて、そんな「在日」と呼ばれる人たちのことを少し共有したいと思います。在日44万人の内訳は、韓国籍41万人、朝鮮籍3万人で、そのうち66%は植民地時代に日本に来た一世とその子孫に付与される特別永住資格を持っています。朝鮮籍=北朝鮮籍と誤解するかもしれませんが、そうではありません。もともと朝鮮半島はひとつの国でした。朝鮮籍は、旧植民地であるところの朝鮮の出身者という意味であって、国籍ではなく外国人登録証上で出身地を表記しているということです。
先日、ビビンバネット=神奈川の朝鮮学校と多文化共生を考えるネットワーク主催、神奈川ネットワーク運動とネット青葉協力により
ビビンバネット第3回「共に生きる」学習会〜安英学さん講演会「夢は叶う!」が開催されました。
朝鮮出身者としてのアイデンティティを大事にしながら、プロサッカー選手として複数のJリーグチームで活躍し、ワールドカップでは北朝鮮代表選手として出場した安英学さんのお話は、ユーモアと温かみのあるものでしたが、だからこそ逆に、多くは語られなかった差別や困難を感じました。安さんは、ご自身が体験したサッカーのフィールドは国籍の差別のないプレーを讃えあうものであった、どのチームでプレーしても常にサポーターは温かかったと言います。知らない者同士が、ディズニーランドに行けば笑顔で手を振り合うでしょう?あの感じですよ。あれが社会で作れないでしょうか?と問いかけられました。
朝鮮学校に行くと、すれ違う生徒たちが心を込めて挨拶をしてくれて、話しかけると、目を見てはっきりと丁寧に応じてくれます。
生徒たちが、高い社会性と芯の強さを持つことを感じます。社会に出て行けば、差別にさらされる機会が多いだろう生徒たちにその強さは自分らしさを守る鎧にもなるだろうし、また、その高い社会性はおそらくどのコミュニティでも共生社会をつくるための素養になるのではないかと思うのです。安さんのお話で感じたのは、誰もが称賛するそのお人柄の素晴らしさです。おそらく彼がいたからこそどのサッカーチームでも愛され、引退した今も彼を慕うサポーターがいるということだと感じました。
共生社会をつくるために必要なのは、社会を構成する一人ひとりの心がけとだと改めて思います。
「魂」をこめてサッカーに取り組んできた安さんは、今は若い世代が同じように夢を持ち、追いかけ、叶えるためのサポートに取り組んでいるそうです。こうした人材育成に取り組む素晴らしい人材がこの国にいるということは、私たちの希望ではないでしょうか。
神奈川県は「共にいきる社会かながわ憲章」を掲げながら、朝鮮学校への各種支援を凍結しており、朝鮮学校の生徒たちは劣悪な環境で学習せざるを得ない、そして、校舎のリノベーションを寄付で行なっています。差別を行政が行うということは大きな問題であり、これは差別行政を容認する私たち市民の問題だと考えています。朝鮮学校への支援の凍結を一刻も早く解除し、共にいきる社会づくりを神奈川から始めてほしいものです。